いつも暗闇にいた。
その暗闇には出口があった。
その向こうに何があるのか、知りたかった。
ここは穴倉。ニンゲン達はShameと呼んでいるけど。
穴倉には出口があって、とってもまぶしいんだ。でも僕達は、そこから出ることができない。
あの向こうには何があるのかな?
いつもそんなことを考えてた。
ニンゲン達は、僕達を壊しにやってくる。
壊れたら、僕らは魂になって、暫くうろうろする。気に入った場所があれば、そのあたりの土に潜り込んで、体を作る。
いつもそれの繰り返し、だったけど、、、
きっかけは、
魂になってるとき。
ニンゲンが
僕に気付いた。
そのニンゲンは、ひげもじゃの老人で、魔法で紐みたいなのを飛ばしてきて、僕の体を削っていった。
ごりごりって削れていって。痛いの何のって。
そして僕は力尽きて、魂になった。
いつもニンゲンは、力尽きた僕の体から金貨とか宝石とかを取っていくんだけど、その老人は違った。
魂になった僕を
じっと
見ていたんだ。
今までにこんなことは無かった。ニンゲンは、魂になった僕が何をやっても、僕の方を見ることは無かった。今までは。
僕も老人を見つめていたら、
「ふむ、君には感情があるようじゃな。」
と話し掛けてきた!
「何で僕と話せるの?僕が見えてるの?カンジョウって何?」
「こらこら、質問は1つずつするもんじゃ。」
と老人は、懐から丸椅子を取り出し、よっこらしょっと腰をかけた。
「立ち話は腰に響くんでな。失礼させてもらうよ。」
老人は懐から何かを取り出し、火を付けて吸い始めた。旨そうだ。
「ねぇそれ何?美味しいの?教えてよ!」
僕は老人に掴みかかろうとしたけど、魂だけなのですっぽ抜ける。
「はっはっは。そうせかすな。好奇心旺盛な奴じゃな。」
老人はしばらく、じっと僕を見つめ、そして、
「君は外に出たくないかい?」
と言った。
僕が?外に?
行きたいよ。
ものすごく行きたい。
あの光の向うに何があるか、見たいよ。
でも僕は、行くことが出来ないんだ・・
こう老人に言うと、老人はニヤリと笑い、呪文を唱え始めた。
その声を聞いて、
なんだか自分が
水になって、
渦に
飲み込まれ
るよ
う
な
・・
・
・
・
・
・
・
気が付いたら、
僕はニンゲンになってた。
すごいふにゃふにゃしてて、頼りない体。すぐ壊れそうだ。それに少し寒い。
隣に老人がいた。場所は穴倉のままだ。
「素っ裸では寒かろう。これを着なさい」
と老人は、懐から服を取りだして、僕に着せてくれた。少しあったかくなった。
さらに老人は、懐から剣と鎧と盾、カバンを取り出して、僕にくれた。
剣や鎧は、僕を痛くするニンゲンが持ってるものだからいやだったけど、しぶしぶ身につけた。
「そろそろ外にでるかの。」
僕と老人は、出口までやってきた。とても眩しい。
僕は、出口で躊躇した。いつもみたいに出れないんじゃないかと思って。
でも、老人に手を引かれ、
あっさりと、
外に出れた。
外の世界は
眩しくて、
広くて、
暖かかった。
僕はへたり込んで、やわらかくて心地よい草の上に寝転んだ。
「この道をまっすぐ行くと、首都ブリティンにいける。首都なら、いろんな物を見てることができるぞぃ。」
「ほんと!すぐに行こうよ!」
がばっと起き上がって、僕は老人を引っ張っていこうとした。
でも、老人は首を横に振った。
「君一人で行くんじゃ。わしは行けん。」
「どうして!」
老人は首を振るばかりで、何も言わない。
「・・・分かったよ、僕だけで行くよ」
歩き出そうとした僕に、老人は旨そうに吸ってたもの(煙草というらしい)をくれた。
「餞別じゃ、あと、、、GMには気をつけるんじゃぞ。分かったな。」
そう言い残すと、魔法でどこかに行ってしまった。
こうして僕は、外の世界に出ることが出来た。ニンゲンとして。
首都にはいろんなものがあった。大きな城や、たくさんのニンゲン、小さくてかわいい動物や心地よい音。
おしゃべりに夢中なニンゲン達を見ながら、とびきり甘くて美味しいもの(ケーキと言ってたな)をほおばった。
単調で退屈な穴倉とは大違いだ。
ずっとここに居れたらいいな。
僕は水場(なんで水が吹いてるんだろう?)で、老人から貰った煙草を吸ってみた。
げほげほげほ。
咽に引っ掛かるみたいだ。なんだこりゃ?
全然美味しくないよ。
そのとき、
「その煙草、何処で得た?」
と、突然声がした。
いつのまにか、後に真っ赤なローブが立っていた。
何か違う。只のニンゲンとは違う感じだ。
「それを誰から受け取った?」
僕は今までの事を説明した。
穴倉にいたこと。
老人にニンゲンにしてもらったこと。
その老人に煙草を貰ったこと。
「そうか。君はエレメンタルか・・・」
赤ローブの顔はよく見えたなったけど、
「悪いが君は消えてもらうよ」
僕は、とてもとても恐くなって、
「その煙草もあっちゃいけない物なんだ」
何も言えず、動くことも出来ず、
「例外は許されないんだよ」
僕は、希薄になって、
周りが暗闇になって、
世界が
無くなった。
暗闇の中、ぼぅっと光る水晶球の前の老人。
「また失敗か・・」
にやりと笑い、手に持った煙草を吸った。
旨そうに。