私の目の前に、真新しい家が建っていた。
周りには、ギルドのみんながいる。
「なかなか良い家じゃないか。」
黒ローブを来たギルドマスターが呟く。
大理石で出来た2階建ての建物、これが私達のギルドハウスになる。
「誰がこの家を管理する?」
女魔法使いが尋ねる。
「xxxちゃんでいいんじゃねぇか?家持ってないし。な。」
と私に聞くのは、骸骨鎧のシーフ。
「そうしろよ!これで家持だな!わっはっは。」
がっしりした斧使いが、うるさいぐらいの大声で笑う。
この4人と私が、ギルドのメンバー。
大切な、私の仲間。
ギルドのみんなは、狩りの帰りにギルドハウスにやって来る。
今日もそうだ。 狩りに行くほどの力の無い私は、いつでもみんなが来れるよう、準備をしておく。
食堂に集まったみんなに、私は紅茶とクッキーをふるまう。
「このクッキー、xxxちゃんが作ったの?」
と女魔法使い。私は「うん」と頷く。
「美味しいわ。料理も上手いし。いいお嫁さんになれそうね。」
私はてへへと笑う。
男達は、狩りで得たアイテムを真剣に吟味している。
女魔法使いは、クッキーをつまみながら、つまらなそうに男達を見ている。
私は、頬杖をつきながら、そんなみんなを見ていた。
私は、
この時間が好き。
とても幸せ。
ずっと、
このままで
いて欲しいと
願う。
ある日、斧使いが大工道具を手に、ギルドハウスにやってきた。
「ちょっと台所借りるよ」と言うが早いか、彼は台所で大工仕事を始める。
かんかんかん・・・
金槌の軽やかな音が響く。
訝しげな私に、「まぁ見てな・・」と彼は大工仕事を進め、みるみるうちに、水樽を使った流しが出来上がっていく。
「いつもxxxは、料理する時水を汲みに外に出てただろ?これを使えば、いちいち外に出る必要は無いぞ。」
私は嬉しくなって、思わず斧使いに抱き付いた。
斧使いは、ちょっと照れくさそうに、笑った。
骸骨鎧のシーフが、ベランダに佇む私を見つけた。
「あーあ、植木枯らしちゃって・・って、泣くなよ。」
「だって、すぐ枯れるんだもん・・・」
私の手には、枯れた植木があった。
シーフはやれやれといった表情をした。
「いいか、手入れってのは、水だけやってりゃ良いってもんじゃない。」
シーフはそう言うと、一つの植木に手を伸ばした。
「たとえばこれだ、、虫が付いてるじゃねぇか。こーゆーときには・・」
懐から緑色のポーションを取り出し、数滴垂らす。
「これで虫はイチコロだ。ちなみにこのポーションをパンにでも塗ると、人間もイチ」
言いかけたシーフの後頭部に、分厚いSpellBookがヒットする。
「何しやがる痛てぇじゃねぇか!」
目に涙が溜まっている。本当に痛かったらしい。
「xxxちゃんに余計な事を吹き込まない。」
シーフの足元に落ちたSpellBookを拾い、女魔法使いが歩いてきた。
「xxxちゃん、クッキー分けてくれない?家でも食べたいの。」
「はい!」
駆け寄った私の頭を、女魔法使いがくしゃくしゃと撫でた。
ある日の昼下がり、ギルドマスターがやってきた。
漆黒のローブに身を包んだ彼は、少し疲れた顔をしていた。
私はとっておきの茶葉で紅茶をれ、クッキーと共に出す。
「ありがとう」と言うが、物思いに耽り、口をつけようとしない。
食堂の隅にある、共有財産を入れておくメタルチェストをしばらく見つめ、、、
「・・・ xxxちゃん、このギルドのみんなは好きかい?」
と突然、ギルドマスターは私に質問をした。
「大好きだよ!みんなと一緒に、仲良くできれば、とっても嬉しいよ。」
「・・・そうか」
彼はしばらくの間、私をじっと見つめる。 そして、ふっと目をそらし、初めて紅茶に口を付けた。
「・・うん、xxxちゃんの入れてくれた紅茶が、一番旨いな。」
私は、てへへと笑った。
数日後の夜、食堂のテーブルには紅茶とクッキーと、ギルドのメンバーが揃っていた。
紅茶はとっくに冷めていたが。
私は、自分の手を見つめたまま、動けなくなっている。
「このチェストに入れておいた金が無くなっている件だが・・」
ギルドマスターは、シーフをじっと見つめながら話す。
「何か知ってる事があれば、教えて欲しい。」
岩の中のような、固い空気。
「なんで俺を見てるんだよ。」
「いや、何か知ってるかと思ってね。」
シーフの抗議にも、ギルドマスターは動じない。
私は知っている。
昨日の深夜に、シーフと女魔法使いが、この食堂にいた事を。
シーフが妙に動揺していた事を。
「この事は誰にも話しちゃだめよ、xxxちゃん。女同士の約束。」と言った女魔法使いの目が、恐ろしかった事を。
「あぁそうだよ。俺が盗んでた。」 沈黙に耐えかねたシーフが、白状した。
「何もかもお見通しってわけだ」
そう言いながら立ち上がり、ギルドマスターに向き直り、
「あんたはいつもそうだ。常に正しくて、自信満々で。」
シーフが、すっ、と手を差し出す。
「ムカツクんだよ。」
ギルドマスターの胸に、短剣が突き立っていた。
シーフの、いつも使っている短剣が。
ギルドマスターは、口から泡を吹き、椅子から転げ落ちる。
「貴様!」
斧使いがテーブルを弾き飛ばし、女魔法使いが詠唱を始める。
無力な私は、テーブルと一緒に弾き飛ばされていた。
剣の交わる音が、
鈍く折れる音が、
怒号が、
悲鳴が、
聞こえた。
私は、弾き飛ばされたテーブルの影で、ぶるぶると震えるしかなかった。
静かになった。
どれだけ時間が経ったのだろう。
テーブルの淵から、覗き込むと、そこには、血の海に浮かぶ、4つの死体が・・・
私の中で
私の壊れる音がした
台所から包丁を持ってきて、みんなの首を切り取った。そして、食堂の隅に有るメタルチェストに並べる。
これでみんな
けんか
しないよね?
みんないっしょに、
なかよくしようね。