Short Story. 3
ギルド
(Guild)

 私の目の前に、真新しい家が建っていた。
 周りには、ギルドのみんながいる。
「なかなか良い家じゃないか。」
 黒ローブを来たギルドマスターが呟く。
 大理石で出来た2階建ての建物、これが私達のギルドハウスになる。
「誰がこの家を管理する?」
 女魔法使いが尋ねる。
「xxxちゃんでいいんじゃねぇか?家持ってないし。な。」
 と私に聞くのは、骸骨鎧のシーフ。
「そうしろよ!これで家持だな!わっはっは。」
 がっしりした斧使いが、うるさいぐらいの大声で笑う。

 この4人と私が、ギルドのメンバー。
 大切な、私の仲間。


 ギルドのみんなは、狩りの帰りにギルドハウスにやって来る。
 今日もそうだ。 狩りに行くほどの力の無い私は、いつでもみんなが来れるよう、準備をしておく。
 食堂に集まったみんなに、私は紅茶とクッキーをふるまう。
「このクッキー、xxxちゃんが作ったの?」
と女魔法使い。私は「うん」と頷く。
「美味しいわ。料理も上手いし。いいお嫁さんになれそうね。」
 私はてへへと笑う。

 男達は、狩りで得たアイテムを真剣に吟味している。
 女魔法使いは、クッキーをつまみながら、つまらなそうに男達を見ている。
 私は、頬杖をつきながら、そんなみんなを見ていた。

私は、
この時間が好き。
とても幸せ。

ずっと、
このままで
いて欲しいと
願う。


 ある日、斧使いが大工道具を手に、ギルドハウスにやってきた。
「ちょっと台所借りるよ」と言うが早いか、彼は台所で大工仕事を始める。
 かんかんかん・・・
金槌の軽やかな音が響く。

  訝しげな私に、「まぁ見てな・・」と彼は大工仕事を進め、みるみるうちに、水樽を使った流しが出来上がっていく。

「いつもxxxは、料理する時水を汲みに外に出てただろ?これを使えば、いちいち外に出る必要は無いぞ。」

 私は嬉しくなって、思わず斧使いに抱き付いた。

 斧使いは、ちょっと照れくさそうに、笑った。


 骸骨鎧のシーフが、ベランダに佇む私を見つけた。
「あーあ、植木枯らしちゃって・・って、泣くなよ。」
「だって、すぐ枯れるんだもん・・・」
 私の手には、枯れた植木があった。
 シーフはやれやれといった表情をした。

「いいか、手入れってのは、水だけやってりゃ良いってもんじゃない。」
 シーフはそう言うと、一つの植木に手を伸ばした。
「たとえばこれだ、、虫が付いてるじゃねぇか。こーゆーときには・・」
 懐から緑色のポーションを取り出し、数滴垂らす。
「これで虫はイチコロだ。ちなみにこのポーションをパンにでも塗ると、人間もイチ」
 言いかけたシーフの後頭部に、分厚いSpellBookがヒットする。
「何しやがる痛てぇじゃねぇか!」
 目に涙が溜まっている。本当に痛かったらしい。
「xxxちゃんに余計な事を吹き込まない。」
 シーフの足元に落ちたSpellBookを拾い、女魔法使いが歩いてきた。
「xxxちゃん、クッキー分けてくれない?家でも食べたいの。」
「はい!」
 駆け寄った私の頭を、女魔法使いがくしゃくしゃと撫でた。


 ある日の昼下がり、ギルドマスターがやってきた。
 漆黒のローブに身を包んだ彼は、少し疲れた顔をしていた。
 私はとっておきの茶葉で紅茶をれ、クッキーと共に出す。
「ありがとう」と言うが、物思いに耽り、口をつけようとしない。
 食堂の隅にある、共有財産を入れておくメタルチェストをしばらく見つめ、、、
「・・・ xxxちゃん、このギルドのみんなは好きかい?」
と突然、ギルドマスターは私に質問をした。
「大好きだよ!みんなと一緒に、仲良くできれば、とっても嬉しいよ。」
「・・・そうか」
 彼はしばらくの間、私をじっと見つめる。 そして、ふっと目をそらし、初めて紅茶に口を付けた。
「・・うん、xxxちゃんの入れてくれた紅茶が、一番旨いな。」
 私は、てへへと笑った。


 数日後の夜、食堂のテーブルには紅茶とクッキーと、ギルドのメンバーが揃っていた。
 紅茶はとっくに冷めていたが。

 私は、自分の手を見つめたまま、動けなくなっている。

「このチェストに入れておいた金が無くなっている件だが・・」
 ギルドマスターは、シーフをじっと見つめながら話す。
「何か知ってる事があれば、教えて欲しい。」

 岩の中のような、固い空気。
「なんで俺を見てるんだよ。」
「いや、何か知ってるかと思ってね。」
 シーフの抗議にも、ギルドマスターは動じない。

 私は知っている。
 昨日の深夜に、シーフと女魔法使いが、この食堂にいた事を。
 シーフが妙に動揺していた事を。
「この事は誰にも話しちゃだめよ、xxxちゃん。女同士の約束。」と言った女魔法使いの目が、恐ろしかった事を。

「あぁそうだよ。俺が盗んでた。」 沈黙に耐えかねたシーフが、白状した。
「何もかもお見通しってわけだ」
 そう言いながら立ち上がり、ギルドマスターに向き直り、
「あんたはいつもそうだ。常に正しくて、自信満々で。」
 シーフが、すっ、と手を差し出す。

「ムカツクんだよ。」

 ギルドマスターの胸に、短剣が突き立っていた。
 シーフの、いつも使っている短剣が。

 ギルドマスターは、口から泡を吹き、椅子から転げ落ちる。
「貴様!」
 斧使いがテーブルを弾き飛ばし、女魔法使いが詠唱を始める。
 無力な私は、テーブルと一緒に弾き飛ばされていた。

剣の交わる音が、
鈍く折れる音が、
怒号が、
悲鳴が、

聞こえた。

 私は、弾き飛ばされたテーブルの影で、ぶるぶると震えるしかなかった。

 静かになった。
 どれだけ時間が経ったのだろう。
 テーブルの淵から、覗き込むと、そこには、血の海に浮かぶ、4つの死体が・・・

私の中で
私の壊れる音がした

 台所から包丁を持ってきて、みんなの首を切り取った。そして、食堂の隅に有るメタルチェストに並べる。

これでみんな
けんか
しないよね?

みんないっしょに、
なかよくしようね。


2003/4/19( in Sakura shard )
wrriten by konayuki( into UO:Sakura shard )