Short Story. 6
レポート:秋
(Autumn report.)

 Yewの森が、赤く色付いていた。木々が黄色から赤へ美しいグラデーションを創り、冬に備え葉を落とす。
 秋。紅葉の季節。
 俺と同居人は、Yew銀行から北に向かい、森の奥へと進んでいく。
「♪〜」
 鼻歌なんぞを歌い、ラマの背に揺られる同居人。俺はいつものWizard'sHatを目深に被り、オスタードを操り後に続く。
 同居人の背中には上下逆で括り付けられた竹箒があり、その向こうの熊帽子と共に、ラマに揺られてゆらゆら動く。
「晴れてよかったね〜」
 同居人が頭上を見上げ話す。
 黄色から赤に変りつつある木の葉の陰から、抜けるような青い空が見えた。
「あぁ、絶好の『実験』日和だな」
と俺は返す。
 そう。実験。
 俺達は『実験』をする為に、ここまで来ていた。

 只の実験じゃない。
 秘密の実験、だ。


「ここらでいいか」
 Yewから20分ほど分け入った場所。
 もう辺りに家も見えず、人気も無い。ここなら見られる心配も無いだろう。
 俺達は、乗ってきたオスタードとラマを木に繋ぎ暫く歩き、少し開けた場所へ移動した。
「わぁ、綺麗だよ」
 はらはらと舞う、黄色や赤色達。
 それを仰ぎ見つつ、くるくると回る同居人。
「まー、綺麗だな」 
 俺は足元に積もった枯葉を、足で散らす。
「そして積もって腐って土に返るわけだ」
「もーキミは、下ばっか見て。」
「へいへい」
 呆れ顔の同居人をよそに、俺は辺りの状況を確かめる。
 適度に積もった枯葉。
 比較的開けた場所。
 人の気配も無し。
 上等だ。

 さて、
「始めるとするか」
「うぃ〜」
 秘密の実験を。


「Kal Vas Xen Hur」
 俺は手始めに、風エレを召還する。
 周りの木々が揺れ風が集まり、渦を巻く。
 その風に乗り、小さな枯葉が宙に舞う。
「わぁ」
 同居人が熊帽子を、飛ばされないよう押さえる。
 まだまだ。
 俺は風エレを操り、風を溜め込む。
 吹き込む風に応じて、木々がざわめく。
 風エレに吸い込まれた枯葉がくるくると渦巻くのが見える。
 ・・・よし、十分だ。
 俺は風エレの制御を止め、開放する。
 大量の風を溜め込んだエレメンタルは、自身の開放と共に風を放つ。
 ぶぉっ!
 一瞬にして辺りの枯葉が吹き飛ばされる。
 ついでに同居人が煽られ、転んだ。
「いてて、、わざとやった?」
「いや、そっちが勝手に転んだんだろ?」
「・・・」
 勝手に転んどいて睨まれても困るんだが。
 辺りを見ると、枯葉が飛ばされた綺麗な円が出来ている。
「上出来だ」

 そして実験は、
 第2段階へ。


「Kal Vas Xen Ylem」
 召還に応じ、足元から沸きあがる土エレ。
 その見上げんばかりの巨体に、同居人があるものを渡す。
「はいこれ持って」
 渡したのは竹箒。
 しかも只の竹箒じゃない。この道40年の名人作の、銘入り竹箒。
 魔女が乗っても大丈夫な、天下の逸品!
 ・・・らしいが。
 戦う事しか知らない土エレは、もちろんそんなもの持つわけがなく、只佇んでいた。
「ん〜」
 同居人が、困った顔をしてこっちを見る。
 やれやれ。
 俺は土エレを制御し、動くべき動作を入力する。
 土エレは入力された動作に従い、竹箒を手に取り、さっさっさと、

 掃き始めた。

 よしよしと、満足げに見つめる同居人。
 任務は只一つ。
 吹き飛ばしてなお残った枯葉を、中心に掃き集めること。
 土エレは着実に、任務をこなす。
 ただ呆れるほど遅い。
「おっそいなぁ〜」
「仕方ないだろ土エレなんだから」
 俺は土エレの動作を見守りつつ、適当な場所に腰を下ろす。
 この調子なら、1時間はかかりそうだ。
「俺は寝てるからな、監視しとけよ」
「えー、なんで」
「お前の『実験』だからな。何かあったら起こせ」
 ぶうたれる同居人を無視して、俺は昼寝を始めた。

 俺が夢から覚める頃、
 実験は第3段階に突入した。


「これはちょっと、、、」
 目の覚めた俺の前には、予想よりもうず高く積まれた枯葉の山があった。
「多すぎやせんか?」
「いいじゃない。『大は小を兼ねる』ってね〜」
 ほんとかよそれ。
 同居人はいそいそと、ネタを仕込む。
「よし、準備おっけー。仕上げをお願い」
「ん」
 俺は火エレを召還する。
「Kal Val Xen Flam」
 炎が、湧き上がる。
 俺はその炎を慎重に操作する。
 なにせ周りは、可燃物だらけだ。
「よし着火〜」
 のんきな同居人の声。
 俺は火エレを操作し、FireBallを吐き出させる。
 ・・同居人の足元に。
「ぅわ!」
 えぐれる地面。
 凍る同居人。
「・・・わざと、だね」
「いや、単なる事故だ」
 俺はそっぽを向きつつ、再び火エレに火を噴かせる。
 その炎は小高く積まれた枯葉に移り、めらめらと成長していった。
「ちょとこれ、、、炎強すぎない?」
 炎の成長は続く。
「そうかも、、な」
 そして瞬く間に、身長以上の火柱になった。
「・・・やべぇ」
 ふと脳裏に浮かぶ。
 新聞一面に「Yew大火災」の文字。
 犯人として捕まる俺達。
 そして明かされる秘密の実験・・・
 それだけはダメだ!
「Kal Vas Xen An Flam!」
 俺は慌てて水エレを召還する。
 すでに延焼を始めた炎を、消して回る。
「あちちち!」
 同居人も小さな炎を、踏みつけて消して回る。

 こうして火災を食い止め、火柱も鎮火したころに、
 いよいよ実験は最終局面を迎えた。


 あたり一面、悲惨な状況だった。
 焦げた枯葉、濡れた地面。漂う煙。
 そして、中心の枯葉は見事に焼けていた。
 同居人は、小枝を手にその山を崩す。
 その中から、ころんと出てきたのは、、、

 芋。

 ただし半分炭化しているが。
 炭と化した芋を手に取り、しげしげと眺める同居人。
「さぁ、結果を確かめろ」
「・・・ん?」
「トボケルナ。その芋を食え」
「えーだって・・」
「その味を確かめるために、ここまでやったんだろ」
 そう、「精霊で作った焼き芋は美味しいのか」というこっぱずかしい実験(だから秘密)の結果を見なければ、ここまでやった意味が無い。
 同居人は、半分に割った(砕けたとも言える)芋をこわごわと口に運び、舐める。

「・・・苦い・・・」


2003/09/20( in Sakura shard )
wrriten by konayuki( into UO:Sakura shard )