Two Adventurers Stories. 1
二人の冒険者
(Two adventurers)

 暗くて寒いダンジョン深部。他人のGateに飛び込んだ俺の、辿り付いた場所。

 さてこれからどうしたものか、と辺りを見回すと、一人の女魔法使いが、 物陰にうずくまっているのを見つけた。

「よぅあんた。パーティー組まないか?」
 声を掛けて反応を待ったが、様子がおかしい。

彼女の目は、
怯えきった猫の
それと同じに思えた。

 彼女は一言も話さなかった。俺の質問に首を振って答えるだけだ。
「Gateはできるか?」
 首をちょっと横に降る
「Recallは?」
 ちょっと縦に振る。
「ふむ、、、ルーンは?」
 ちょっと横に振る。
 何かの理由でルーンを無くし、脱出できなくなったのか。
「Greater Healは?」
 ちょっと縦に振る。
「じゃあ俺が前衛、援護してくれ」
 暫く躊躇した後、ちょっと縦に振った。 ・・とりあえずパーティーは組んでくれるらしい。
「俺は一切魔法が使えないし、ルーンも持っていない。だから出口目指して歩くぞ。」
 立ち上がらせようと手を伸ばすと、彼女は身を縮める。
 俺は、伸ばした手で頭を掻き、「やれやれ・・」と歩き出した。
 彼女もちょっと離れてついて来た。


 俺が剣で敵を薙ぎ払い、彼女がHealで傷を癒す。 彼女は少々失敗の黒煙を上げたり、位置取りにもたついたりした。 ぎこちない連携。

 彼女は、敵のいないときは、俺を凝視している。
 あと、俺の剣の届く範囲には、絶対に入って来ない。

 俺を、警戒している?
 何故だか分からないが、そうとしか思えなかった。

 暫く進んだが、一向に出口の気配が見えないので、キャンプを張ることにした。

 扉を閉めた部屋の中で、手持ちの木屑に火をつけ、暖を取る。
 持ち歩いているベットロールは彼女に渡した。 彼女はそれを引ったくり、部屋の隅にうずくまった。
 その頃には俺も慣れたので、そのまま肉を焼き始める。

 香ばしい匂いに包まれた沈黙。
 俺は思わず口を開いた。
「そんな隅じゃなくてこっち来いよ。」
「・・・私は、あなたに会う前に、」
 幼い声だ。だが、、

「仲間に、殺されかけた」

 じっ、と俺を見つめ、
「ルーンも奪われた」
 絞り出すように、
「仲間だと思っていた のに・・・」
 傷に耐えるように、
「あいつらも最初は、あなたと同じだった。」
 彼女が語る。

「だからわたしは、あなたを信じない。」

 沈黙。

 俺は、焼き上がった肉を皿に載せ、彼女の近くに置いた。
「俺を信用しなくてもいいから、自分の為に食え。 毒が入ってないのは見てただろ?」
 俺が火の傍に戻るのを確認して、暫くためらい、 彼女はもそもそと肉を食べ始めた。

 緊張し続けたせいだろう、食べ終えた彼女は眠りに落ちた。

 俺は、彼女の近くにも火を作り、暖をとってやり、元の位置に戻った。

 彼女の腕は、見習い卒業程度だ。戦闘での動きもぎこちない。
 もしかしたら、初めての仲間と初めての冒険に、ここに来ていたのかもしれない。
「そして、裏切り、か」
 俺の呟きは闇に消えた。


 彼女の目が覚めたので、出口に向けて歩き出した。

 彼女は以前のままで、ちょっと離れてついて来る。
 俺も言う言葉が思いつかない。

 無言で歩く2人

 だが、、、
「やばい・・Drakeだ。」
 曲がり角の向こう側に、嫌な奴を見つけてしまった。
 魔法を使わないが、体はドラゴンと大差無い。 只の剣士と見習い魔法使いには荷が重い。
「BladeSpiritsは使えるか?」
 首を横に降る彼女。
 良い手が思いつかない。
「走り抜けるぞ。」
 彼女の顔がこわばる。
「いいか、今回だけは俺の言うことを聞いてくれ。俺と一緒に走るんだ。」
 彼女の首は微動だにしない。
 もし彼女が狙われれば、一撃で終わる。かばえる場所に置く必要がある。
「今回だけだ。頼む。」
 思わず一歩踏む出すと、彼女も一歩下がる。

 無力感。

「・・それじゃ、俺が注意を引くから、お前は裏側を走って抜けろ。」
 彼女の反応も確認せず、俺はDrakeの前に飛び出した。

「やいこの%$#野郎!勝負だ!」

 俺は派手に動き回り、奴の注意を引こうとした 。何回か攻撃を当てるが弱る気配も無い。
 彼女は、曲がり角でへたり込んでいる。

「走れ!」
 俺の声に反応して、後ろ側を走り抜けようとする彼女。 だが、俺の声を聞いたのは彼女だけじゃない。

 Drakeは、ちらと後をみて、そして
「しまった」
 軽く振った尾が、彼女を吹き飛ばした。


 わたしが最後に見たのは、目の前に現れたぶっといしっぽ。
 その後は、何も感じなかった。
 あぁ、死ぬんだ。
 あんまり良い人生じゃなかったな、、
 冒険者になれば、何か変わると思っていたけど、やっぱり、、
 いいように利用され、
 裏切られて、
 捨てられて。

 もう嫌な思いをしなくていいんだ。
 楽になれる。

 ・・・でも、あの剣士の焼いたお肉、美味しかったな。

 彼なら、信じられたかな・・・
 でももう遅いよね、死ぬんだし。

 ゆっくりと視界が回復していく。お花畑が見えるんだと思った。
 ・・・違った。
 冗談のような光景。
 目の前で、剣士がDrakeの頭を押さえ込んでる。 Drakeが彼を食べようとしている方が正しいかも。
「立って走れ!」
 食べられかけている、いや、押さえ込んでいる彼が叫ぶ。

彼は何故逃げない?
彼は何をしてきた?
わたしは何をしてきた?

わたしに
出来る事は何?

 彼の足元に、剣が落ちているのが見える。

 わたしは剣に飛びつき、押さえ込まれて動けないDrakeの眼に狙いを定め、
「何をしているんだ逃げろ!」
 剣を、叩き込んだ。


 片目を潰されたDrakeは、咥えた剣士を放したものの、怒り狂い暴れる。

 剣士は片手で魔法使いを庇い、魔法使いは剣士の傷を癒し、 Drakeの攻撃を避けながら逃げる。

 森の匂いがする。
 光が溢れてくる。
 出口はもうすぐそこ。
 二人は一緒に走った。


2003/04/07( in Sakura shard )
wrriten by konayuki( into UO:Sakura shard )