Two Adventurers Stories. 4
手紙(後編)
(a letter. 2)

 そのとき小山が膨らみ、中から咆哮が響き渡る。

WhiteWyrm

 美しく凶悪な、白きドラゴンの眷属。
 俺は、半分腰を抜かしている彼女を左手で抑え、じりじりと後退する。
 起き上がり、首をもたげたWhitWyrmは、緩慢な挙動でこちらに近づいてくる。
『ほぅ、、ニンゲンか。』
 意外に流暢な言葉が、WhiteWyrmから聞こえた。が、、、
『わざわざ殺されにやって来るとは御苦労。ご期待に添えるよう、存分に殺してやろう。』
 言ってる事はむちゃくちゃだ。

 ・・あの巨体であれば、洞窟までは追って来れまい。
「走れ!」
 俺達は洞窟に向けて走り出した。が、いきなりぶち当たる衝撃。

 EnergyFieldが・・
『まぁゆっくりしていけ、ニンゲン。』

 殺気。
 とっさに上げた剣ごと、WhiteWyrmの手が俺達を吹き飛ばす。
 雪まみれになりながら体制を立て直した俺は、見事にくの字に曲がった剣を足元に捨てた。

「An Ex Por」
 彼女は雪まみれのままParalyzeを試みるが、軽くレジストされる。

 睨みつけるしかできない俺達。

 そして、当然のように、悠然と歩み寄ってくるWhiteWyrm。
『どうしたニンゲン。もう終わりか?』

 遊んでいやがる。

 俺には遊んでやるつもりも、遊ばれてやるつもりも毛頭無い。
 俺は背中から包みを取り出し、布を剥ぎ、槍を構える。
 雪に溶けるような、純白の槍。

 その槍を見て、奴は一瞬、動きを止めた。


 相手の見せた隙に、俺は乗じる事が出来なかった。
 恐怖心の為に。
 だが、結果的には命を救われる事になる。

 WhiteWyrmは、槍を見つめ、
『その槍を何処で手に入れた』
 と聞いてきた。
『その槍を、何処で手に入れたのか、を聞いておる』

 なぜこの槍を気にするんだ?
 まさか。

「この槍は、ある人に渡す為に預かったものだ」
『誰に渡すのだ』
 俺は、受取人の名前を告げる。

『・・懐かしい・・それは私の名前だ。』

 WhiteWyrmが槍に腕を伸ばす。俺は反射的に槍を構える。
 だが、
 純白の槍は、きらきらとした粉に変わって、伸びた腕に吸い込まれていった。

『他にはなにか預かっていないか?』
 槍を構える姿で固まっていた俺は、慌てて手紙の存在を思い出した。
「手紙も預かっている」
『読み上げよ。ニンゲンの文字は小さすぎる。』

 俺は、寒さばかりではない震えを押さえつつ、手紙の封を切り、読み上始めた。


 偏屈で頑固な、私の友人へ。
 この手紙を読む頃には、私はもう死んでいることでしょう。
 十数年前、人間の姿だった貴方との旅は、私の中で大切な宝物になっています。
 貴方のくれた槍も、何度私と私の家族を守ってくれたことでしょう。
 この槍は、私の死後、貴方の元に返す事にしました。
 正当な持ち主の元に。

 私が一つ心残りな事があるとすれば、貴方と分かれる際に言えなかった事です。

ありがとう。

 貴方は私の、最高で無二の、友人であり、仲間です。

 貴方の人間の友より


 手紙を聞き終えたWhiteWyrmは、ふん、と鼻を鳴らした。
『ニンゲンとは分けの分からん存在だ。同属を殺すくせに他種族の私に感謝したりする。』
 巨大な顔が俺をじっと見つめている。
『なぜだ。何故そのようなことをするのだ?』

 知ったことか!

「人間にはロクデナシかそれ以外の2種類いるんだ。」
 俺は投げやりに答えて、こう付け加えた。
「・・・あんたの友人は、後者なんだろうよ。」

 WhiteWyrmの記憶。
 緑髪の女剣士。
 彼女の口癖。
「人はロクデナシとそれ以外がいてね、」
 にこやかに笑う彼女の笑顔。
「貴方はその、後者なのよ。」

 WhiteWyrmは目を細め、咆哮を上げる。
 衝撃で岸壁が揺れ、雪が舞う。
『愉快だ!このような感情は久しいぞ!』
 俺達には、何が起きたのか分からないが、さっきの俺の解答がよほど気に入ったらしい。
『今回はこの感情に免じて逃がしてやる。』
 洞窟を塞いでいたEnergyFieldが解かれる。

『2度目は無いからなニンゲン。死にたくなったらまた来るがよい』


 俺達は洞窟を抜けるまで走り通し、外の雪に倒れこんだ。
「か、彼って、Dragonじゃない!」
 彼女は緊張が解けたからか、少し興奮気味になっている。
 俺は、WhiteWyrmとDragonの違いを教えてやろうと思ったが、思っただけで止めた。
 まぁ、同じものだ。

 それよりも、俺は別の事を考えていた。
 依頼主の母親に、あの手紙を書かせたのは何だったんだろうか。
 あのWhiteWyrmと、どのような旅をしたのだろう。
 今となっては聞くことは出来ない。

 まぁいいや。

「さぁ、帰るぞ。」

 今はBritainに戻って、旨い酒で体を温めたい、
 ただそれだけを思っていた。


2003/05/13( in Sakura shard )
wrriten by konayuki( into UO:Sakura shard )