Two Adventurers Stories. 9
復讐(上)
(Revenge -1-)

 雲が重い。
 灰色の雲が一面を埋め、どんよりとした空を作る。
 彼女はWizard'sHatを乗せた顔を上げ、空を見上げる。
 …なんか嫌な空。
 口だけでそう呟く彼女に、「行くぞ」と声をかけ進む剣士。その言葉が刺々しい。
 今日の彼は、妙に不機嫌だ。
 依頼を受けた、あの時から。


「あの城の調査?」
 夜の酒場。
 陽気な笑い声の響く店内、だがその一角だけは、空気が硬い。
 剣士はジョッキをあおり、向かいの『依頼主』を睨みつける。
「あんな所、もう何も無いだろう」
 ウィスキーを舐めていた私は、彼のその言葉に驚いた。
 敵意すら感じられる、攻撃的な声。
「いやね旦那」
『依頼主』は、その声も気にせず、続ける。
「あの城が、最近怪物のねぐらになってるって噂でしてね。」
 そして金貨の詰まった袋を机に置いた。
「調査と、もしも何かいたら退治もお願いしますよ。まぁ、元そこにいた騎士の方なら、詳しいでしょうから。」
 彼は、その『騎士』という言葉に、少しだけ反応した。


 二人の冒険者は、無言で森の道を進む。
 雑草が伸び放題の森の道を抜け、開けた場所にあったのは、

  半分崩れた城。

 広くて整備されていたであろう庭は見る影もなく荒れ、城の壁は下から蔦に覆われている。
 本来左右対称なはずの城はその半分が焼け落ち、焼け跡は森と同化しつつあった。

 彼はそれを睨みつけ近づいていく。
 無言のまま。
「ねぇ・・」
 私は沈黙に耐えかね、口を開く。
「昔、騎士だったって、本当?」
「あぁ」
 あっけなく。
 彼はこっちも見ずに答える。
 取り付くしまも無いその態度に、返す言葉も思いつかず、そのまま城へと入っていった。


 蝶番が壊れ片方しか残ってない扉を抜け、ホールへと入った。
 かつて優美に飾られてたであろうその場所に、薄暗い埃が舞う。
 左側の壁が一部崩れ、薄明かりが差し込んでいる。
 怪物が潜んでるかと思いきや、その内部は何の気配も無い、

 ただの、廃墟。

 私達は足を踏み入れる。
 踏み出した足が、崩れた木を踏み音を鳴らす。
 彼は、厳しい目を四方に巡らす。
 右手には、2階への大きな階段と、いくつかの扉。
 正面にある両開きの扉は朽ち落ち、その内側は聖堂のようになっている。
 私達は、敵を警戒しつつ、その聖堂に足を踏み入れる。

 聖堂の正面には、上半分の欠けたステンドグラス。
 両側の窓はもれなく割れ、並ぶ椅子も無残な骨格を露にしている。
 茶色に変色した絨毯を進む彼の後を、なぜか私は付いていけなかった。
 彼は絨毯の終りまで進み、佇む。

 遠くから見るだけの私には、その後姿から、生きている感じが抜けている感じがした。
 まるで、石像のように。

問えない問い。

ここで何が
あったのか。


 キン、という音に目を上げると、彼が傍らの蝋燭台を、真っ二つにし、
「あっ、、」
何も言えない私の横を通り、すたすたと外に出て行く。
「Briに戻るぞ。」
 進む背中が言う。
「ここにはもう、何も無い。」
「え、でも、2階とか…」
「何も無いと、言ってるだろう!」
 彼は肩越しに私を睨み、叫ぶ。
 怒気を孕んだその声に、私は殺されると思った。
 血の気の引いた、真っ青な私を見て、彼は顔を前に戻した。
「・・・すまん。ここは辛気臭い。まず外に出よう。」


 外は薄暗く、弱々しい光が夕刻を告げていた。
 私達は倒木に腰掛けた。ただ向きは互い違いに。
 私は、彼の顔を見るのが恐かったし、彼もその気がないらしい。

 空の光は、さらに衰え、風景が闇に染まってゆく。

「昔、」
と唐突に、彼が話し出した。
「俺は、ここに居たんだ」
「ここの騎士団に、近衛兵として着任した」
「俺達の任務は、ここに住む王族を守る事」
「だけどある晩、火事が起きて、、、」

「そう、お前は
守る事が
出来なかったんだ」

 割り込む声。
 薄暗い森から。
 とっさにNightSightを自分と彼にかけ、声の主を探す。
 声の主は、漆黒の鎧に身を包み、馬上からこっちを見ていた。
「・・貴様ぁ!」
 彼が突然、声を上げ突進する。
 漆黒の鎧は馬を巡らし突進をかわし、城に向けて馬を飛ばす。
「誰?」
「・・あいつは騎士団の団長で、」
 彼は歯軋りをしながら、

「奴が王族を殺した、
裏切り者だ」

と呟き、走り出した。

 その目は、禍々しいまでに光っていた。


2003/10/05( in Sakura shard )
wrriten by konayuki( into UO:Sakura shard )