Two Adventurers Stories. 10
復讐(下)
(Revenge -2-)

 彼は歯軋りをしながら、

「奴が王族を殺した、
裏切り者だ」

と呟き、走り出した。

 その目は、禍々しいまでに光っていた。


 朽ち果てた聖堂。
 半分欠けたステンドグラスの下、蝋燭の光に照らされ、漆黒鎧の男はいた。
「まだよく覚えているよ」
 漆黒の男が彼に向かって言う。
「着任式のあの時、お前はがちがちに緊張してたよな」
 彼は背中から剣を抜き、男に迫る。
「その剣を授けた姫さんに見とれたりな。」
「黙れ!」
 彼は荒々しく剣を叩き込むが、軽く馬を動かされ、かわされる。
「その剣に刻まれた『誓い』は、結局どうなった!」
と叫び、男は部屋を抜けて行く。
 彼もそれを追う。

 ・・・おかしい。

「まって!」
 叫ぶ私の声は、追う彼には届かない。
 ほのかに光を放つ蝋燭、それを支える蝋燭台。
 ・・・1つだけあったそれは、彼が切り倒したはず。
 誰かがわざわざ持ち込んで、しかし漆黒鎧の男には、そんな暇は無いはずで、、

 私は彼を追い走った。

 他に誰かがいる。
 しかも、罠を張って待ち構えている!


 すでに暗いホール。
 その一方から破壊音が聞こえる。
「よくここで馬鹿騒ぎしたなぁ」
「殺してやる!」
 半分落ちかけた扉を蹴破り、馬に乗った男が飛び出し、階段を登ってゆく。
 その後から、剣を握り締めた彼が飛び出してくる。
「待ってこれ罠よ!」
 私の声は、もう彼の背中に届かない。
 怒り狂った彼は、男を追い階段を駆け上る。
 私も追って、階段を上る。

 2階。
 廊下といくつかの扉。
 何処?と思った時、声が聞こえた。
「お前あの姫様に、惚れてただろ」
「黙れ!」
 そして破壊音。
 私はその方向に走った。


 廊下を走りきり、曲がり角の先に、

 薄明かりに浮かぶ、
 彼の背中が。

「あの夜も、こんな曇り夜だったな」
 彼の立つ部屋の入り口、その向こうから男の声が漏れる。
「その時お前は、すっかり俺に騙されて、この場を去ったな」
「あぁそうだ。そしてあんたはここで、姫を殺した。」
「戻ってきた時のお前の顔、見物だったぜ」

彼の背中が動く。
それに合わせて、
何かの影が、
動いた。

私はとっさに、
影の前に割り込む。

 その影は手にした斧を私に叩き込み、防ごうとした私の槍はたやすく砕かれ、、、


 俺が目の前の男を殺そうと動いた時、

 とん

 と背中に重み。
 振り返ると、そこには

斧を手にした影と、

斧を打ち込まれた彼女と、


彼女から

吹き出している


真っ赤な

鮮血



「やれやれ」
 漆黒の鎧を着た男が、目の前にいる。
 俺は、数人に押さえ込まれている事に気付く。
「また、守りきれなかったな」
 男の声が響く。
 俺ははっと顔を巡らす。
 部屋の隅に、包帯を巻かれ、気を失っている彼女の姿が。

「姫様を守れなかったから、今度はこの子を守ってたってか」
「・・違う」
「何が違う?お前は昔の後悔を消すために、新しい人形を守ってたんだよ」
「違う!」
「そうかな?知ってるぞ。いろいろと訓練したり、旅をしたりしてるらしいじゃないか」
「・・・」
「冒険をしたいだけなら、お前一人の方が安全で早いはずだ」
「・・黙れ」
「一緒に居たいだけなら、わざわざダンジョンに連れて行く必要も無いだろう?」
「その薄汚い口を閉じろ!」



「お前はな、
  危険な場所で、
  大事な人形を
 『守る』事、
  それの為に、
  冒険をしてるんだ。」


 沈黙


「ほんとはな、」
と、男が口を開く。
「お前をスカウトするつもりだったが、ダメだ。」
「あんなに簡単に、感情に流されるようじゃな。」

 男はふぅと溜息を付き、撤収の合図を出す。
 俺を押さえ込んでいた奴等が、俺にパラライズをかけ、リコールで消えてゆく。

「この女は預かっておく。」

 男は彼女を抱え上げ、俺を見下ろす。
「ラストチャンスだ。師匠の所で待ってろ」
と言葉を残し、ゲートを開き姿を消した。

動けない俺を、
見る者は、
誰も
居なくなった。


「どうしたんじゃ。相棒はどうした?」
 ブリティン北の鍛冶屋。
 いつものように仕事をしていた老人の前に、抜き身の剣を携えた剣士がいた。
 剣士は座ることも無く、ぼそぼそと老人に成り行きを語った。
 そして、
「コロシテヤル」
と呟き、近くにあったダミー人形を、真っ二つに切り裂いた。

「冷静になれ」
「なれるか!」
 かっとなった剣士は、老人に切りかかる。
 老人はそれを避けるが、近くにあった道具が吹き飛ぶ。
「感情に流されるな。流されると、心の闇に食われるぞぃ。」
「うるさい!」
 剣士は老人に、剣を叩き込む。
 老人は半身でかわし、剣士の鳩尾に肘を叩き込む。
「がはっ」
 気を失った剣士の膝が折れる。
 それを抱き支える老人。
「まったく、、手間のかかる」
 老人は剣士の両脇に腕を通し、引きずっていく。

「しかし、、重い奴じゃ。ベットで気絶させるべきだったわぃ」


2003/10/05( in Sakura shard )
wrriten by konayuki( into UO:Sakura shard )