Two Adventurers Stories. 11
決着の時(1)
(Showdown -1-)

夢。

 夢だとは分かりつつ、でもそれを止める事は出来ない。
 見たくない映像を見せ付けられるのは、拷問だ。

昔の、夢。
繰り返し見た夢。
醒めない、悪夢。


騎士団の入団式。
輝くステンドグラスに照らされた姫と、
授けられた、剣。


食堂。
馬鹿騒ぎをする
団員達。


訓練場。
師匠にしごかれ、
転がり見える天井。


そして、あの日。
(やめてくれ・・)
姫の寝室前で
立ち番をする俺。
焦げ臭い匂いと共に飛んで来る、
黒衣の団長。
「武器庫が火事だ!
ここはいいから消火にまわれ!」
俺は慌てて走り出す。


数箇所から昇る火の手。
只の火事じゃない。
違和感を感じ、
姫の寝室に走る俺。


寝室からは、
(止めてくれ・・)
血の臭いがこぼれ、
そして部屋の中には、
血まみれのベットと、
首の無い姫の体と、
姫の首を持つ、

黒衣の団長。


(もう、たくさんだ・・)
返り血で染まり、
頬を釣り上げ、
男が一言。



「よぉ、少し、手遅れみたいだな。」




 武器屋の朝は、うるさかった。
 階下に響く音で、俺は目を覚ました。
 俺が階下に下りると、師匠が剣を鍛えていた。
「何をしている」
「おぬしの剣が、歪んでたのでな」
「そんな、鍛え直してる暇があるか!」
 手近な机を蹴り飛ばす。
 卓上にあった道具が飛び、部屋中に散る。
「何時奴から連絡があるか分からないのに、そんな悠長な事してられるか!」
 老人は、俺の怒鳴り声を無視し、仕上がった剣を詳細に眺めた後、剣を放り投げた。
 飛んできた剣を、俺は反射的に掴む。
「我等の主は、もうおらん。」
 老人は、炉の火を見ながら語る。
「過去を間違ったとしても、どうもできん。」
 俺は、剣に刻まれた誓いを見る。

『我等主の為にのみ、
この剣を振わん』

「素振りでもして、頭を冷やせ」
と老人は、今度は俺の鎧を鍛え始めた。


 剣を振う。
 何万回と繰り返した、基本の型を。
 体は自動で動き、頭は別の事を考える。


 剣技を磨き、
 死線を抜け、
 強さを欲した、
 俺の旅。

 それは、復讐の時の為に。

剣は滑らかに
宙を舞い、
その剣先が、
弧を描く。

 裏切り者を、
 倒す為に、
 殺す為に、
 復讐を果たす為に。

 それが、旅の理由。

剣先の弧が
伸びる度に、
空気の裂ける音が
響く。

 旅の理由は、
 それだった。
 それだった、以前は。
 確かに、復讐の為だった。


 だが。


ふと、
深き森に響いた、
安っぽい音を
思い出す。




 深いダンジョンで、
 白い雪の大地で、
 森の中の湿地帯で、

 いつも背後にいた。
 背中を任せていた。



 怯えた猫のような目をしていた。

 決意に充ちた目をしていた。



 旅に出る理由なんて、
 どうでもよくなっていた。



いつも横に、
彼女がいたから。




 気配。
 俺はとっさに振り向きつつ剣を叩き込む。
 その剣が突き出された槍を捕らえ、弾き飛ばす。
 槍を飛ばされた師匠が、にやにやしながら立っていた。
「調子が戻ってきたようじゃの」

 その老人は、珍しく皮鎧を身にまとっていた。
「なんで皮鎧なんか着てるんだ?」
「不肖な弟子だけでは、心配でな」
「・・はっ」
 俺は剣を肩に担ぎ、やれやれと肩をすくめて見せた。
「金属鎧じゃ、ぎっくり腰になるってか」
「・・・口まで、調子を取り戻しおって」
 老人は苦笑いをしながら、「行くぞ」と言った。


「連絡が来たのか?」
「あぁ、昨晩な」







 …この、くそじじぃが。


 俺と師匠は、商人から馬を買い、目的地に急いだ。

そこは、
俺達の故郷。


すでに朽ち落ちた、
我等が城へ。


2003/10/26( in Sakura shard )
wrriten by konayuki( into UO:Sakura shard )