Two Adventurers Stories. 12
決着の時(2)
(Showdown -2-)

 空は、昨日と同じ曇。
 色の陰った森を、俺と師匠の馬が駆け抜ける。
 走り慣れた道。
 迷うはずの無い、帰還コース。
 見慣れた風景が、背後に飛んで行く。
 頭に血の上った昨日は、こんな事にも気付かなかったな・・

「手下どもは、おらんようじゃの」
 師匠の声が届く。
 何処に何がいても、分からないわけがない。
 どうやら、小細工はないらしい。
「もうすぐだぜ。準備はいいか、じーさん」
「誰に向かって言っておる」


 半分朽ち落ちた、城。
 その前に、かつて騎士団を束ねた男が居た。
「よう、遅かったな」
 その漆黒鎧を来た男の乗る馬には、もう一人、意識を失い縛られた彼女がいた。
「今日は、手下はおらんのか」
「おや、これはこれはお師匠様。お久しぶりです。」
 男はわざとらしく、礼をする。
「ふん。主を裏切るような奴を、弟子に持った覚えは無いの。」
「100人切りの伊達名を持つ師匠相手に、何人連れても無意味ですからね。」
「ふん」

 男は、前に乗せた彼女の髪を掴み、持ち上げる。
 彼女の肺から空気がもれ、「うっ」という声が口から出る。

 思わず目が行く。
 それを読み取って、男が話す。
「安心しろ。命はある。ただ、昨日から意識が戻ってないがな。」

「ラストチャンスだ」
 男は剣を彼女の首に当て、俺に話す。
「オレの元に来るなら、この子の命は保証してやる。」
「もしくはこの子を見殺しにして、後悔を増やすかだ。」
 男は片頬を釣り上げ、笑う。

「さぁ、どっちがいい?」
「どっちも嫌だね」
 即答。

 男の怪訝そうな顔。

 俺は、その顔に向かって、宣言する。


「そいつを誰だと
思ってる。
この俺の、
『相棒』だぜ?」

 そして俺は、大声で叫ぶ。

「おい何時まで
  寝てるつもりだ!
  今すぐ起きて、
  動け!」


声が、する。
頼もしい、声。
いつも背中に
聞いてた声。




その声は、
ダンジョン深部で、
怯える私に、
手を差し出してくれた。




その声は、
いくつもの死線を抜け、
いつも私を守ってくれた。




その声が、
私に起きろと言っている。




だから、私は・・・





 覚醒。
 背後に見知らぬ気配。髪を掴まれている感触。
 私はとっさに頭を後ろに振り後頭部をぶつけ、その反動のまま馬上から落下する。
 縛られてる事にその時気付くが遅く、右肩から落ち激痛が走る。
 痛みを無視して横に転がる。馬上から剣が伸び肩をかすめる。

 そのまま跳ね起き、その時初めて、見知らぬ気配が漆黒鎧の男だと知った。

 腹部の痛みに、状況を思い出す。
 戒めが解かれても、右腕はもう使い物にならない。
 腹部の傷が開いてる感触がある。

 漆黒鎧が動く。
 剣を閃かせて。
「こっちじゃ!」
 背後から聞きなれた声。
 後ろに飛ぶ。
 目前を剣がかすめる。

 浮いた私の体が、いきなり横に動き出す。
 気付くと、縛られたその体を、走る馬上に引き上げられていた。
「よう目を覚ましたのぅ」
 そこには、彼のお師匠様がいた。


 確信は、あった。
 俺の声に反応し、彼女が目を覚まし、不意を突いて男の手から逃れた。
 その彼女を、師匠が回収している。
 漆黒鎧の男は、意表を突かれた顔をしていた。
「驚いたよ。まさかここまでやるとはな」

 空はよどみ、雨がぱらぱらと降り始めた。

「さぁ、決着をつけさせてもらうぜ、『団長』さんよ」
 俺は、こちらに戻ってくる師匠の馬を横目に見つつ、
「まさか逃げるなんて、みっともない真似はしないだろうな?」
と男を挑発した。

 雨は徐々に強くなり、雨粒のカーテンが厚くなってゆく。

「・・はっ、お前にオレが倒せるってのか」
「後悔だとか誓いなんてのは、もうどうでもいい」

 俺は剣を抜き、馬を男に向けた。

「俺が、あんたを、
倒してやるよ。」

 俺は剣を、
 体の前に掲げる。
 騎士団の敬礼。

 そして、馬の腹に蹴りを入れ、飛び出して行った。


2003/10/26( in Sakura shard )
wrriten by konayuki( into UO:Sakura shard )