俺は剣を、
体の前に掲げる。
騎士団の敬礼。
そして、馬の腹に蹴りを入れ、飛び出して行った。
馬の蹄が、水溜りをはぜる。
漆黒鎧の男も、剣を抜きこちらに迫る。
交差。
互いの剣が剣を弾き、火花が散る。
行過ぎた馬を巡らした時、すでに男の馬が迫っていた。
俺は首を狙うが、姿勢を低くした相手にかわされ、逆に馬の首を切られる。
その痛みに悲鳴を上げながら、後ろ足で立ち上がる馬。
俺は投げ出される。
受身を取り姿勢を直した時には、目前に男の馬が。
・・・間に合え!
俺は横に飛び退き、馬の脚が体をかすめるのを無視し、走り去る以上のスピードで剣を振る。
手応えがあった。
男の馬は姿勢を崩し、その向こうに男を放り出す。
俺は走り、馬の向こうの男を狙う。
馬の横に来た時、姿が見えないのに気付き、
飛び退く。
俺の居た位置に剣が伸びる。
倒れた馬の陰から、男が出てくる。
雨が、
二人の剣士の
鎧を濡らす。
「これで対等だ」
俺は剣を振り上げ、迫る。
男は避けようとせず、剣を掲げる。
俺はその上から剣を叩き込み、かつ男の横に出る。
男が振り回した剣を沈み込んでかわしつつ回り、下段から剣を振り上げる。
その剣をバックステップしてかわす男。
「はは!そうだその動きだ!」
男が叫ぶ。
「俺はその動きのお前が欲しい」
「嫌だね」
俺も叫び返す。
「俺が戦うのは、俺と相棒の為だけだ!」
私は戒めを解かれ、彼のお師匠様から貰ったポーションで傷を塞いだ。
まだ、まともに動けそうに無いが。
馬から落とされた彼を遠くに見、とっさに走り出そうとした所で、お師匠様に腕をつかまれた。
「やつに、決着をつけさせてくれんかの」
いつもは冗談めかして喋る老人が、真剣な目で私を見る。
「やつに、因縁を断ち切らせてやってくれんかの」
「でも、、」
「なに、大丈夫じゃ」
と老人は、戦う二人を見た。
「わしの弟子が、あんな男に負ける理由は、無い。」
男が迫る。
その斬下を横にすべり避け、横の見えた顔を狙う。
男は首を振り拳一つの隙間で避ける。
剣の勢いそのままにしゃがみつつ回転し今度は足を狙う。
キン !
当たり前のように、そこには男の剣があり、弾かれる。
まだだ!
眼下から迫る男の剣をのけぞってかわし、しゃがみ込んだ姿勢から突きを放つ。
剣は半身動いた男の肩鎧をこすり、火花を散らす。
俺はそのまま前に転がり距離を取る。
雨音が、
ノイズとなって、
戦いを彩る。
奴の戦い方は、昔のままだ。
最小の動きと、
最大のパワー。
だが、単純な事だ。
相手にパワーがあったとしても、当たらなけりゃいいだけだ!
「うぉぉぉ!」
剣を横に構え、迫る。
男は剣を地面に立て、くいっと動かす。
その剣先から泥が飛び・・
俺は片腕でそれを止め、勘を頼りに潜り込む。
動きが止ると思っていた男の剣は空振り。
懐から男を肩で弾く。一瞬浮く男の体。
俺は着地地点に、渾身の一撃を放つ。
男は剣を立てそれを受けるが、耐え切れず姿勢が崩れる。
追撃・・いや、
男の突き。
姿勢を崩しながら放たれた突きが、俺の肩に当る。
威力は弱いが、時間稼ぎには十分。
二人の鎧の隙間から、白い湯気が昇る。
「だぁっ!」
男が、大上段から振りかぶってくる。
速い。
俺は剣を斜めに構え、男の剣を受け流しさばく。
俺の剣に長い火花。
負荷が骨を軋ますが、無視して回りこむ。
男も追従して、剣を振り上げる。
俺はその剣を上に受け流す。
長い火花がやはり、
俺の剣に纏わりつく。
妙な手応え。
些細な、かすかな振動。
剣を受け流す度に、
感じる気配。
そうか・・・
「団長さんよ。」
一度距離を取った俺は、男に話し掛ける。
「暫く第一線から引いてただろ。剣の切れで分かるぜ?」
「何を言い出すかと思えば」
「昔のあんたは、もっと速かったぜ。」
と俺は、にやりと笑う。
男は目を細め、剣を上段に構える。
「だったら、よけてみろよ!」
男の斬下。
確かに速い。
俺は下段から、
男の剣を狙う。
流すためじゃない。
叩き切る為に。
キンッ!
男の剣が、真っ二つに切れる。
驚きの表情で、男の動きが止る。
俺はそれを見逃さず、剣の縁を腹にぶち当てる。
男が吹き飛ぶ。
俺は転がった男を踏み、首に剣を当てる。
気付けば、
雨は霧となっている。
「・・何故だ」
男は驚きの表情を隠せない。
「単純だよ。団長殿」
受け流す時の、火花。
俺の剣の火花は長く、男の剣にはそれが無かった。何故か?
単純な話だ。
只の、刃こぼれ。
男の剣のその溝に引っ掛かり、俺の剣が滑っていたんだ。
だから、纏わりつくような、長い火花が出ていた。
妙な手応えも、これが原因だ。
「だからその溝から、剣を切った。」
「・・・・」
「昔のあんたなら、武器の手入れは怠らなかっただろうにな。」
そして、
雨は上がり、
空は、
晴れていった。
「オレを、殺すか?」
足下の男が話す。
「・・・いや、ガードに引き渡す。そこで死刑になろうが、俺の知った事じゃない」
師匠と彼女が、近づいてくるのが見えた。
「じーさん、後は任せた。」
と俺は、彼女を見た。
彼女はふらふらしているが、自力で立ち歩いている。
「よく、目を覚ましたな。」
彼女は、ちょっと照れながら「うん」と頷く。
「ちょっと、一緒に来てくれないか。」
と俺は、城へ向かって歩き出した。