Two Adventurers Stories. outside 2
人を食らうモノ
(Man eater.)

 ここはブリティン北の鍛冶屋。
 わしはハンマーを振い、薄青い剣を鍛えていた。
 目の前には、この剣の持主であるわしの弟子が座っている。
「ふむ、、そんなに痛んでないようじゃの」
 鍛え上がった剣を眺め、詳細をチェックする。
 柄に彫られた紋章。
 刀身に掘られた、強度を増すための溝が3本。1本は強化時にわしが追加した物だが。
 そして、刀身の根元に刻まれた、誓い。
『我等主の為にのみ、この剣を振わん』
 この剣を使っているのも、もう目の前の若者だけじゃろう。
「どうしたじぃさん」
 こいつも、師匠に対する言葉使いが直らんようじゃな。
「ん、なんでもない」
「理由無くぼーっとするようじゃ、ぼけが始まったんじゃねぇか」
 わしは鍛え終わった剣を、投げる。
 弟子はそれを空中で掴み取る。
「カンペキな仕上がりじゃろ」
「ん・・まぁな。」
 若者は剣を二三度振り、ふと動きを止めた。

「そーいえばじぃさん、『100人切り』ってのは本当か?」
「なんじゃ藪から棒に」
「いや、ふと思い出したんだ」
「その系統なら色々言われたぞぃ。影竜100匹殺しとか美女100人・・・」
「はいはい。うそつけ」
 そう言い残し、呆れた若者は素振りを始めた。

 わしは弟子の剣の動きを目で追いつつ、思う。

・・わしはいろいろ
ほらを吹くがな、

100人切りは、
ほんとうの事じゃ。

それは、苦く醜い、
忘れ去りたい
記憶の中に・・・


 わしがまだ若者だった頃。まだ軍隊の一兵卒に過ぎなかった頃。
 辺境の紛争に派兵された我々は、敵の進行経路に陣を張り、襲来を食い止める任務をうけた。
 我々の陣の後方には、小さいながらも村があり、その村を守りつつ補給基地として使う、という計画。
 まぁ結局は『机上の空論』だった訳だが。

 そこに陣を張ったその夜、わしは偵察命令を受け敵陣へと向かった。
 まさかランタンを持って偵察するわけにも行かず、深闇の森に馬を滑らせ進んだ。
 その時、人の気配がした。
 敵兵か、と身を潜めるが、様子がおかしい。やたら辺りをうろうろしているように見える。
 さらに近づき観察すると、村娘のように見えた。
 森に入って迷ったのか、、、
「おいそこの娘」
 村娘はびくっとし、辺りを見回す。
 わしは娘に見えるよう姿を晒す。
「兵隊、、さん?」
「そうだ」
 見た事があった。
 そう、陣の後方にある村で見た顔だ。

「お前、村の娘だな」
「今日、村を通っていった軍の・・」
「そうだ」
 安心したのか、娘は急に大声で話し出した。
「森で秘薬を集めてたら、あの山の向こう側に敵が見えて、でももっと遠くにいるって聞いてて・・・」
「落ち着け。もうちょっと小さくしゃべれ」
 わしは水筒を渡し、水を飲ませる。
 娘は水を飲み、一息ついた。
「・・で、その敵は、どの山の向こうにいた?」
 娘の指差す方向に、かすかに山の陰が見える。
 わしは頭の中で、地図を展開した。
 ・・報告よりも早いじゃないか、、
 舌打ちをするわしを、心配そうに見つめる娘。
「あの、、村を守ってください! お願いします」
「安心しろ」
 その時初めて、わしは笑ったように思う。
「我々が村を守る。」

 とんだ、嘘吐きだ。


 娘を村に返し、再び森を進む。
 まさか村娘の話だけを報告する訳にもいかない。正しい位置を見極める必要があった。
 敵に見つかないよう迂回しつつ、『あの山の向こう』に向かう。しかし、、
「な、、」
 もぬけの空。
 確かにそこに、陣はあったが、すでに抜け殻。
 敵の侵攻速度は予想以上だ。このままだと我々の陣は不意打ちを食らい、最悪・・
「・・くそ!」
 わしは馬に飛び乗り、最短経路で陣地に戻る。
 敵に見つかったら切り抜けるしかない。一刻を争う。
 ふと村娘の顔が浮かぶ。村に戻すべきではなかったかもしれない。・・いや、今それを考えても仕方が無い。
 わしはただ、馬を飛ばした。


 陣地は蹂躙され、すでに死体の山。
 味方も敵も居ない。
 わしは死体を直視することも出来ず、蹂躙の跡が続く方向を見た。その跡は・・
 村に向かっていた。

 すでにここは負けだ。
 今から村に向かっても無駄だ。
 だけど、
『我々が村を守る』
 数刻前に吐いたせりふが、心に刺さったままだった。


 村は地獄絵図だった。
 敵兵が思うままに略奪し、男を殺し、女を犯していた。
 わしは物陰から、歯軋りしながらその様子を見るしかできなかった。
「いや、やめて!」
 聞き覚えのある声。
 森で出会った娘が、敵兵に引きずられているのが遠くに見える。
 わしは何も考えれず、飛び出す。
 接近するまで数瞬、だが間に合わない。
 無防備な敵兵を後ろから切り殺し、娘を見た時にはすでに、

 自ら舌を噛み切って死んでいた。

「おい残党がいるぞ!」
 わしに気付いた敵兵が叫ぶが、その時にはわしはただ『見ている』だけになった。
 わしの体はわしの意思と無関係に、ただ自動的に人を殺す機械となっていた。
 勝利に酔っている兵隊など隙だらけで、まして略奪中の混乱で、敵は組織的な行動は出来ない。
 そしてこちらは、何も考えず、ただただ敵を殺し続けた。

 動く物があれば、
 とりあえず殺した。

 向かってくるやつも
 切り殺した。

 逃げるやつは、
 落ちてる槍を投げ
 射殺した。

 馬に乗ったやつは、
 馬を殺して
 頭を潰した。

 財宝を漁ってる奴は、
 首を切り取り捨てた。

 飾りを着けた大将は、
 その太った腹を
 切り裂き殺した。


 正直に言おう。

 この時のわしは、
 義務や後悔などとは
 無関係に、
 ただひたすら、
 人を殺す快楽を
 愉しんでいたのだ。

 結果敵を100人倒した所で、それは薄汚い欲望の産物でしかなく・・・


「おいじーさん!」
 弟子の大声で我に返る。
「とうとうぼけたか?」
「・・・ふん」
 わしは愛用のDouble Bladed Staffを手に取り、
「戯言は、わしから一本とれるようになってから吐くんだな」
弟子と対峙する。
「それとも、負けるのが恐いか小僧?」
 弟子もその気になり、剣を構える。
「・・行くぜじーさん、後悔するなよ!」


わしの最後の弟子よ。
その剣と共に、
お前自身と
お前の相棒を守れ。
心の闇に、
食われぬように。


2003/09/21( in Sakura shard )
wrriten by konayuki( into UO:Sakura shard )