闇夜に浮かぶ
二つ月
其の照らすは
希望か、それとも
絶望か。
月光に照らされた、暗い海を渡る。
行き先は船頭に任せ、俺は月を眺めていた。
Britainの2つの月は、互いに補い合うように、ぼんやりと光っていた。
行き先は、よく分からない小島。
友人から託された、地図。
船頭には場所が分かるらしく、迷わず海を進んでいく。
俺にはもう、どっちに進んでいるかもわかりゃしない。
俺に見えるのは、
ただ、
暗闇に浮かぶ、
二つの月だけ。
「嘘だろ?」
酒場での、古い仲間達との語らい。
そこで出てきた、思いがけない話題。
「あいつが、死んだって?」
「いや、死んだかどうか分からないのだけど、、」
一緒に冒険をしていた女戦士が、言葉を濁す。
「ほら、あいついつもふらふらしてたやん」
魔法使いが、酒で満たされたビンを揺り動かす。
「んでな、定期的に会ってたんだが、それがぱったりと途絶えてな・・・」
「なんで俺に連絡しないんだよ!」
「だってお前、いっつも戦争にいってるやん」
そう。
俺は命の取り合いが面白くなって、ギルドから抜け、戦場に足を踏み入れたんだ。
「・・そう、貴方に渡す物があるわ」
「何だこんな時に」
「彼が、何かあったら貴方に渡すようにって・・」
そして女戦士の手には、ロウで封印された封筒があった。
船は進む。
進んでいるらしい、が、変らない月の光と暗闇と、波の音だけが辺りを占める。
時折「あー、波が高いぜ」という船頭のボヤキが聞こえる。
俺は、ランタンを灯し、地図を見る。
消息を絶った友人直筆の地図に、赤い?マークが打ってある。
ここで何があるってんだ?
あれこれと考えるが、思い浮かばない。
まぁ行って見れば、分かる事だ。
俺は地図から
顔を上げた。
月は陰る事無く
そこにあった。
あぁそういえば、あいつと初めて会ったのも、こんな月夜だったな。
俺はその頃鍛冶屋で、あいつは剣士をやってたっけ。
その後に進んだ道は、互いに入れ替わったけど。
あいつは採掘を経てトレジャーハントへ。 俺は、剣士から戦争屋に。
そして俺は戦争にも飽き、戻ってきた頃には、あいつは消息不明になっていた。
女戦士から受け取った封筒の中には、地図と手紙があった。
手紙には、
「月の出ている夜に、この場所へ行け」
とだけあった。
「あー、着きましだぜ旦那」
船頭が荒っぽく船を止める。
俺は船頭に、錨を下ろすよう指示して、船から飛び降りた。
そこは、何も無い小島。
小さな砂浜が、月明かりでぼんやりと光る。
島を全て探索しても、30分で事足りるサイズだ。
「さて、、何があるってんだ・・・?」
誰に言う事無く呟き、俺は目の前に広がる林に、足を踏み入れた。
昔の記憶。
俺がまだ「剣士」で、まだギルドに居た頃の頃の記憶。
「よし、宝箱を掘りに行くぞ」
誰とも無く言い出した宝捜しに出かけた。
地図も解読し、その場所への移動に、船を使った。
あいつの提案で。
ゲートを使えば、瞬時に行けるのに、と俺は船上でぶーぶー文句を垂れていた。
あいつは苦笑いして、
「まぁまぁ、のんびりいこうや」
と、言うだけだった。
小島を探索して10分ほど。
少し開けた場所に、錆びたスコップが突き立っているのを見つけた。
俺は癖で辺りの気配を探り、罠が無い事を確認してから、
悩んだ。
これは、ここを掘れ、という事だろうか?
だけど、「月の出ている夜に」という指示と何の関連があるんだ?
分からねぇ。
まぁ、あいつのやる事に合理的な説明は無理かもしれない。
しかたがない。
俺は錆びたスコップが、まだ使えることを確認して、そこを掘り始めた。
ガツッ
固い物に当った音がする。
俺は手で土を払いのけ、ランタンをかざす。
金属の、、箱か。
俺はさらに周りを掘り進める。
宝捜しのように敵が出てくることも無く、箱の蓋が現れた。
俺は手にしたスコップを投げ捨て、しげしげと眺めた。
鍵は、、、掛かってないようだ。
トラップも、とりあえずは無い。
見せたかったのは、
この箱、なのか?
俺はふたに手を掛け、慎重に開けた。
そこには、、、、
一枚の紙が。
「はぁ?なんだこりゃ」
俺はその紙を手に取り、ランタンをかざし、紙を見る。
そこに記されていたのは、たった一行。
「月夜の船旅は、最高だろ?」
俺は何度か読み直し、読み違い出ない事を確認して、思わず空を見上げた。
そこには、相変わらずの二つ月が。
そうだ。あいつはこーゆーやつだ。
俺らが慌しく行動してても、マイペースを貫いて。
それでいて人の意表を突くのが大好きで。
「馬鹿野郎が」
何も自分の最後の時にまで、ネタを仕込むことも無いだろうに。
俺は月を見ながら、
流れるままに、
涙を流した。